マルチサービスWeb3プラットフォームDebankの多様な機能とオンチェーン動向について
Debankのサービス開始当初は、ウォレットを接続するだけで複数のチェーン上の資産を確認できる、ポートフォリオ管理ツールでした。しかし、現在はX(旧Twitter)ライクなソーシャル機能や、マーケテイングサービス、ランキング機能などのマルチなサービスを展開しています。
本記事では、Debankの多様な機能とオンチェーン動向について考察します。
今回の記事は、以下のような構成で進めていきます。
1. Debankについて
(1)Debankが提供する多様な機能の紹介
2. オンチェーンデータで分析する将来性
(1)Web3 IDのホルダー数に関する考察
(2)DeBank Layer2のオンチェーンデータ分析
3.まとめ
1. Debankについて
本章では、Debankが提供する多様な機能、サービスを紹介します。
(1)Debankが提供する多様な機能の紹介
・自分のオンチェーン動向を追跡できるダッシュボード機能
ダッシュボード機能はDebankのサービス開始当初からある機能で、接続した自らのウォレットの資産や、DeFiに預けている資産を確認したり、所有しているNFTの確認や、オンチェーン取引のログを確認ができます。
Debankとウォレットを接続した後、プロフィール画面を表示して、以下の赤枠で囲ったポートフォリオタブを選択することで、複数チェーン、DeFi上にある自らの資産を表示・確認ができます。
現状、EVM互換性を持つメジャーなチェーンはほとんど網羅しています。対応していないチェーンやDeFiプロトコルは、投票制度を使うことによって、運営に追加を依頼できます。この投票は、提案に対する賛成投票数と賛成票を入れたユーザーのウォレット上の資産額の合計が、大きいものほど重要視される仕組みになっています。
また、NFTsタブで各チェーンに所有しているNFTを確認できたり、取引タブで各チェーンの取引ログをエクスプローラーのように確認ができます。
・DeBank ストリームとDeBank Hiによるソーシャル機能
ソーシャル機能には、DeBank ストリームとDeBank Hiがあり、前者はX(旧Twitter)のツイートとタイムライン、後者はDM(ダイレクトメッセージ)のような機能です。
プロフィール画面でストリームタブを選択することで、自らのストリーム(投稿)を確認できます。スレッド形式で複数のストリーム(投稿)を繋げたり、投票の実施や賞金(USDC/USDTとして出金できる)の配布、Q&A形式などにも対応しています。
また、ホーム画面では他のユーザーのストリーム(投稿)をタイムライン形式で確認でき、コメントやリポスト(再投稿)、いいねなどのアクションができます。表示するストリーム(投稿)は、フォローしているユーザーのみや、ストリーム(投稿)の種類や時間、投稿者の資産額などでフィルターが可能です。
ホーム画面などで見かけた他のユーザーのアイコンをクリックしたり、アドレスを検索することで任意のユーザーのプロフィール画面を閲覧できます。自分以外のユーザーのプロフィールから「こんにちは」(言語設定が英語の場合「Say Hi」)をクリックすることで、メッセージを送れます。
メッセージを送るには、プロフィールに記載されているユーザーが決めた価格(デフォルトは1 $)を支払う必要があります。この制限によって、Twitterなどの既存SNSよりも、悪質なメッセージが送られてくるスパムを抑制できます。この支払いは、メッセージを最初に送る際にのみ必要で、その後のメッセージやり取りは無料で行えます。
・DeBank Cloudによるマーケティングサービスの提供
Debankは、ソーシャル機能で紹介したDebank Hiを使ったマーケティングサービスを、Debank Cloudという形で事業者向けに展開しています。このサービスは、Web3プロジェクトを展開している事業者に公式アカウントを割り振り、その公式アカウントからDebank Hiを通じて新しいNFTコレクションのリリースのような重要な内容を、Debankユーザーに直接届けるサービスです。
このサービスは、以下のWeb3プロジェクトがマーケティングで抱える3つの課題を解決するためのものです。
3つの課題
1)効率の低い広告プラットフォーム
従来の広告プラットフォーム(電子メール、ブラウザ広告、SNSなど)を依然として使っており、実際に届けたいWeb3ユーザーにリーチできていない。
2)ユーザーに盲目的にアプローチする
リードにならない多くのユーザーに対して無駄な広告を出稿してしまっている。
3)ユーザーから効果的なフィードバックが得られない
一方通行の広告になってしまい、フィードバックを得られない。
この3つの課題に対して、Debank Cloudは以下のソリューションを提供します。
ソリューション
1)Web3ユーザーが集まる広告プラットフォーム
Debank Cloudは、前述した多様な機能によって多くのWeb3ユーザーを抱えているDebankという基盤の元、Debank Hiの機能を利用して展開されます。その結果、事業者が届けたいWeb3ユーザーに効果的に広告を届けられます。
2)広告を届けたいユーザーのスクリーニングと従量課金型広告
Debank Cloudでは、Debankが取得しているユーザーのポートフォリオや取引ログを活用して、資産額や愛用しているチェーンとDeFiプロトコル、所持しているトークンやNFTなどでユーザーを絞って広告を出稿できます。
また、事業者の公式アカウントがDebank Hiで広告を出稿する場合、無料でユーザーに送信できます。そして、ユーザーは受信した広告を開封することで、ユーザーが決めた価格を受け取ると同時に広告が表示されます。このように、ユーザーが広告を開封した際に、初めて広告費を払う仕組みになっています。
3)事業者とユーザーの双方向コミュニケーション
Debank Hiのシステムは、最初にメッセージを送る場合にのみ支払いが必要で、その後のやりとりは無料で行えます。従って、ユーザーからのフィードバックや事業者からのインタビューやアンケートは無料で簡単に実施できます。また、Debank Cloud独自の「Userchat」機能で、問い合わせ、機能リクエスト、バグレポートの表示なども実現可能です。
・ランキングやバッジ、IDによるユーザーへの属性付与
Debankには、ユーザーの資産額とフォローされているユーザーの資産額合計を考慮したWeb3 ソーシャル ランキング、エアドロップの受領やDebankが提供するRabby Walletの使用、ウォレットの使用年数やEthereumメインネットで使ったガス代、有料機能を使用やいいね数によって受け取れるWeb3バッジがあります。
Web3ソーシャルランキング上位や特定のバッジを持っているユーザーを確認することで、無数にあるアドレスから、自分が興味のある属性のアドレスを特定できます。特定したユーザーは、バンドルを作成することでリスト化して確認できます。
バンドルでは、リスト化したアドレスのポートフォリオや所有しているNFTを一括で確認できます。また、任意の期間を選択して、その間の資産状況の推移を確認できるタイムマシンという有料機能もあります。
タイムマシン機能のような有料機能はいくつかあり、これらの機能を一括購入すると、VIPというラベリングがされます。このVIPの有効期間によってWeb3バッジを受け取れ、事業者は実際にお金を払ってサービスを購入しているWeb3ユーザーを確認できます。
また、ランキングやバッジ以外にも、Web3 IDというユーザーを属性分析できる要素があります。Web3 IDは、96$支払うことで発行できる100,000個限定のDebankのIDになります。このWeb3 IDの保有者が受け取れるバッジによって、DebankのIDを96$払って取得した属性を持つWeb3ユーザーを把握できます。
2. オンチェーンデータで分析する将来性
本章では、オンチェーン分析ツールDuneを活用して、Debankについて考察します。
(1)Web3 IDのホルダー数に関する考察
前章で紹介したWeb3 IDは、100,000個限定ですが、Debankが現在どれくらい発行されているか公式発表されていません。10/14時点でのWeb3 ID 保有者のWeb3バッジは50,542個発行されていますが、この数字がどこまで信頼性があるのか、オンチェーン動向の観点から考察していきます。まず、Web3 IDを発行するには、Debank Layer2(Debankが管理するウォレット)にEthereum、Polygon、BNB Chain、Optimism、Arbtrium、Base、Avalancheからステーブルコイン(USDT、USDC)を入金し、反映された残高で96$を支払う必要があります。この入金の際のトランザクションデータから考察します。
以下の画像は、最低一回以上Debank Layer2に入金したユーザーと、Web3 IDの購入金額である96$以上を入金したユーザー数になります。最低一回以上入金したユーザーは、Web3 IDの上限発行数100,000を超える119,187人ですが、96$以上入金したユーザーは100,000を下回り、10/14時点のWeb 3 ID保有者のWeb3バッジ発行数50,542よりも少ない42,680人です。
Web3バッジ発行数よりも96$以上の入金したユーザーが少ない理由は、Debank ストリームで賞金に当選したり、Debank Hiで公式アカウントから送付されたお金もDebank Layer2に入金されるため、Debank内で稼げるユーザーは96$未満の入金でもWeb3 IDを発行できる残高に到達できるからです。
実際に、36$以上入金したユーザーは50,060人でWeb3バッジの発行数より少なく、30$以上を入金したユーザーの50,694人からWeb3バッジの発行数を上回っていきました。これらのオンチェーンデータから鑑みるに、Web3 ID 保有者のWeb3バッジは36$以上の入金ユーザーよりも多く、30$以上のユーザーよりも少ない発行数であった。
また、Web3 ID発行のために96$以上を入金するユーザーが約8割強(42680/50542)、残りの2割弱のユーザーが96$未満の入金とDebank内での活動によって稼いだ残高と入金額を合算し、Web3 IDの購入とWeb3バッジの発行しているのが考察できます。
(2)DeBank Layer2のオンチェーンデータ分析
DeBank Layer2は、前述したWeb IDやDebank ストリームの賞金受取、有料機能の購入など、Debank内でのサービスに関する決済に利用されます。Debank Layer2は現在、347,428アカウント登録されており、Polygonチェーンが最もユーザー数が多いです。
Debank Layer2の登録数は、2023年6月から8月にかけて大きく上昇しています。この期間はWeb3バッジの発行開始があり、Web3 ID保有者のバッジ取得に必要なDebank Layer2の登録が盛んになったと思われます。
また、Debank Chainの発表によるエアドロップ期待や、新機能の追加、既存機能のアップデートといったニュースもオンチェーン行動を後押ししたと考えられます。
3.まとめ
Debankは、多様な機能を備えたWeb3プラットフォームで、それらの機能を評価するWeb3ユーザーが実際に課金することで、プラットフォーム収益を得ているプロジェクトでした。実際に、彼らが提供するID(Web3 ID)は、96$という高額なものにもかかわらず、50,000人以上に発行され、485M$(約7億円以上)の売上を記録しています。
こうした有料コンテンツの提供による収益もあり、2021年12月に行われた25M$の資金調達を最後に調達をせず、3年近くもサービスを提供し続けています。
Debankのような自らも活用しているWeb3サービス・ツールに関しても、今後紹介していきたいと思っています。興味があれば、次回も閲覧いただけますと幸いです。
執筆者:こにちゃん
最後まで読んでいただきありがとうございました。