はじめに
本記事では多くの大企業との提携も発表し、急成長を遂げるPolygonチェーンの成長要因を分析します。
尚、技術的な観点ではなくビジネスサイドの戦略的な観点から分析したものであり、公開されている情報を確認した上での考察となります。
Polygonの基本情報
まずは簡単に基本情報をおさらいします。
2017年に設立、2020年にメインネットローンチ。
EthereumのサイドチェーンPlasmaネットワークを使って、Ethereumの性能上の問題の解決を目指した。
2021年2月、Maticは「Ethereum互換ブロックチェーンのインターネット」を目指すとし、プロジェクト名をPolygonにリブランディング。(なので、チェーン名はPolygonだがトークン名がMaticという状況となっている)
リブランディングの理由は、レイヤー2ネットワークの様々なソリューションに結合していくプラットフォームになることが目標であり、それが”ポリゴン柄”のような形なので、ブランディングのためにも名称を変更。
近年はZK領域に力を入れており、別のプロジェクトの買収や専門ファンドを設立し、ソリューションを展開中。
Polygonの急成長の理由
では、本題に参ります。
Polygonの急成長の理由の1つに「大企業との提携」を次々と実現したビジネス的な戦略にあります。スターバックスやディズニーなど、世界的に有名な企業もPolygonを採用しており、日本企業でもKDDIがリリースしたNFTマーケットプレイス「αU market」でもPolygonが採用されています。
ではなぜ、Polygonは次々と大企業との提携を実現できたのでしょうか?逆に大企業はなぜPolygonチェーンを選択したのでしょうか?
その背景を考察した所、大きく3つの理由が存在すると考えられます。
独自プラットフォームやチェーンを目指さず、イーサリアムのL2チェーンとしてのポジショニングを貫いた点
大企業のweb3活用ニーズ(既存顧客が多いのでガス代が高いチェーンは使えない、環境負荷が高い技術は批判がくるので使えない)とマッチした点
丁寧な発信活動を絶え間なく行い続けていた点
それぞれを解説します。
1、独自プラットフォームやチェーンを目指さず、イーサリアムのL2チェーンとしてのポジショニングを貫いた点
Polygonはリリース初期からイーサリアムのセカンドチェーンとしてのポジションを打ち出しました。
イーサリアムのスケーラビリティを解決するプロジェクトは他にも多数誕生しましたが、他のスケーリングソリューションが技術開発をしたり、独自チェーンのPRをする中でいち早くリリースし、イーサリアムのセカンドチェーンとして事例の獲得に先んじて注力していました。
もちろんPolygonとしても技術開発は行っていましたが、どちらかといえば、イーサリアムのアップデートに伴う開発や事例やポジショニングを獲得することを優先し、その後に技術開発に注力しています。事実、ZK領域に力を入れ始めたのはここ数年であり、初期から開発に力を入れていたわけではありません。
これは元々の創業時にイーサリアムの思想に強く共感し、そのサポートをしようとなったので、戦略的というよりも信念としてイーサリアムのスケーラビリティを確保するために動いています。
また、今後の展望としてもあくまで”イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決する存在”として成長させていくことを明言しています。
2、大企業のweb3活用ニーズ(既存顧客が多いのでガス代が高いチェーンは使えない、環境負荷が高い技術は批判がくるので使えない)とマッチした点
大企業は既存顧客が多いため、web3への参入にあたり、ガス代が高いチェーンを採用することは難しいです。そして、環境問題に対しての世論が高まっている中で、環境負荷の高いチェーンを採用することもできません。
それらの需要にマッチしたチェーンがPoS採用でガス代も安価なPolygonでした。
3、丁寧な発信活動を絶え間なく行い続けていた点
もちろん他のチェーンも発信をしていますが、中でも特にPolygonは発信を丁寧に行い続けています。コミュニティ活動はもちろん、AMAも積極的に実施し、その文字起こしをnoteや公式ブログにまとめて発信しています。
また、大規模な提携の度にもリリースを出し、草の根的な営業活動を絶えず行い続けています。
以上、3点が「Polygonの急成長を支える大企業の事例を獲得できた理由」だと考察します。
それを支えるコアな価値観
最後に、このような動きができるPolygonチームのコアな価値観を2つ紹介します。
開発者ファーストの姿勢
KPIが価格ではなかった
こちらもそれぞれ解説します。
1、開発者ファーストの姿勢
Polygonチームは創業メンバー全員が開発者出身です。なので、開発者の気持ちをよくわかっており、チェーンのエコシステムの発展には開発者に好かれるコミュニティを築くことが必須だとわかっていました。
なので、DiscordやTelegraphのコミュニティーを多数構築し、全てに丁寧に返信しています。直接的な勉強コンテンツや助成金も積極的に実施しています。
また、大きなアップデートや方針決定の際にはコミュニティからの意見も聞きながら進めています。
2、KPIが価格ではなかった
リサーチを進める中で、ここが最もユニークで特徴的な観点だと感じました。
PolygonのKPIは「大衆化」にあり「トークン価格」ではありませんでした。
これはファウンダーが金銭や収益を目的としておらず、あくまで世界中の人がブロックチェーンを活用する世の中を作ることを目的としていたことが理由です。
だからこそ初期から「開発者ファースト」であり、「法人営業等のロビー活動」や「コミュニティ活動」にも積極的に力を入れることができました。
トークン価格がKPIであった場合、長期的な施策に力を入れづらくなると同時に、技術競争等の開発に注力してしまう可能性が高いです。
まとめ
以上、Polygonの急成長の要因をビジネスサイドから考察しました。
簡単に整理すると、このようになります。
急成長の理由の1つは「大企業との提携」を次々と実現しているから
大企業と提携できているのは、ポジショニング、大企業のweb3活用ニーズとのマッチング、丁寧な発信とロビー活動にある
その経営戦略が実現できたのはファウンダーの「開発者ファースト」と「大衆化を目的におく」価値観によって実現された
結局、大企業との提携を実現しているのはPolygonチームであり、そのメンバーはそのチームに流れる価値観によって動いています。
つまり、Polygonチームに流れるコアな価値観である「開発者ファースト」や「大衆化がKPI(目的)」であったことが、開発者から愛されるコミュニティを実現し、大企業との提携を実現する経営戦略を実行できたと考えられます。
web3は技術的な側面が取り上げられることが多いですが、その技術を実現するのは人間であり、発展させるのも人間ですので、ファウンダーの思想や価値観を見ることでより理解が進むかもしれません。(著者:mitsui)
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