本記事ではNFTを使うことのメリットや意味、今後どのような活用に可能性があるのかということを軸にこれまでのNFTの市場動向、これからどんなものが来るのかということに筆者の考えを交えながら記述していきます。
「NFTを使うにしても何をどうすればいいのかわからない」や「NFTである意味があるのかを考えると0に戻ってしまう」という悩みをよく耳にするのでそういった事業者の皆さんにはぜひ読んでいただきたい内容になっております。
また今回、ニュースレターの最後に10枚限定でNFT配布の受け取りをできるリンクがあるので、是非読んだ証としてNFTを獲得してください。暗号資産やネイティブのウォレットアプリも必要ないので簡単なUXで受け取りを体験することができます。
NFTとはなにか
NFTの簡単な説明は、時間や発行者の情報と共に格納するメタデータ(画像・音声・動画など)が改ざん困難な形でブロックチェーンにデータベースとして残ることで、デジタルデータに数量的な概念や所有概念を持たせたりすることができるといった技術です。
NFTの構造的な理解は、前回の記事「NFTやブロックチェーンに関する事業者のよくある勘違い」で触れていますので、ぜひ興味があれば読んでみていください。また、もう少しNFTそのものに関して知りたい方はEthereumの公式ページ「非代替性トークン」のトピックを読んでみてください。
NFTの価値とはなにか
NFTの価値を考える時、多くの方に「なんであのNFTがそんな高額で取引されてるのか」と聞かれることがあります。その答えは「取引している主体者がそのNFTに対してそれだけの価値を感じて取引をしているから」というものになります。とてもシンプルですが、価値があるから取引が行われているのではなく、取引が行われたから価値がつくというのに近いです。
例えば、金塊を想像してください。執筆当時は1gあたりを9,770円で取引されています。ということは10kgあたり約1億ということになります。貰えるものなら欲しいです。
しかし、よく考えてみるとこの金塊は、いわばただの重めの石です。金塊を持っているからといって寿命が伸びるわけでも、エネルギーを摂取できるわけでもありません。金の利点といえば、将来的に高値で取引できるかもしれないということです。つまり、金の価値は「金には価値がある」という価値合意のネットワークが世界中でできていることにあります。逆に言えば、砂漠の中で水が欲しくてたまらない旅人に金塊を渡しても嬉しくないでしょうし、取引は成立しません。その瞬間において旅人は、価値合意のネットワークに存在しません。
NFTも同様にその価値のネットワーク内で取引が行われているので、高値で取引されていることになりますし、「なんであのNFTがそんな高額で取引されてるのか」と聞く人は価値合意のネットワークの中にいないということです。
NFTは合意形成のネットワークを作りながら価値をボトムアップで作っていくという場面においてはかなり有用です。現実世界のアセットをトークン化するRWA(Real World Asset)の領域や既出のIPとの親和性が高いのは既に価値合意のネットワークができているからです。NFTに紐づける前から既に紐づけたアセットに価値があることを知られているからです。
これまでのNFTと市況感
これまでの市場を簡単に振り返ってみましょう。2021年~2022年の前半にかけてのNFT市場は、いわゆるバブルと呼ばれる時期でした(図内のバブル期)。NFTに対する過度な期待から取引が行われていました。2022年の後半からはNFT市場は冷え込み、なかなかNFTを売り切ることの難易度も高くなりました(図内の失望期)。そして、取引の冷え込みは今も尚続いています。これからはNFTを使っていかに価値を創出するかという点にフォーカスが当たり、業界でもその話題が活発化しているように思います。(図内の価値創出期)
各時系列を少し詳しくみていきましょう。
2021年~2022年の前半:NFTを使ったプロジェクトであることに注目が集まり、多くのプロジェクトが登場しました。この時期からBAYCやCloneXなどのBluechip NFTと呼ばれる一連のNFTプロジェクトが登場しました。
多くのNFTがジェネラティブNFTと呼ばれる各種のパーツ(目・鼻・口・体・背景など)を組み合わせて作られたアートをNFTとして販売します。今では一般的なGiveaway(拡散活動に対してNFTの優先権などをプレゼントするマーケティング手法)やAMA(Ask Me Anything:「プロジェクトについてなんでも聞いてもいい場所」としてTwitterのスペースを駆使して情報を発信するPR手法)を使ってプロジェクトへのアテンションを集め、セールを行います。
2022年の後半~:2022年6月あたりからNFTの取引量は減少していき、6月以降からは取引が横ばいになっていましたが、儲かるということが(過度な)ホットトピックでなくなった市場性は企業参入を増加させ、StarbucksやNikeなどの企業のNFT参入を活発にさせました。
2023年になってからBitcoin上のNFT「Ordinals」が話題となり、Bluechip NFTのBAYCを運営するYuga LabもOrdinalsでNFTを販売し話題となりました。
マーケットの冷え込みを加速させた出来事として、2023年7月にはBluechip NFTの一つであるAzukiの新コレクション「Elementals」に関する一連の騒動によりAzukiのフロアプライスが17ETHから6ETHまで下落しました。これによりBluechip NFT全体の価格も下がりました。今回の騒動から業界では「NFTは投資商品になるか、否か」という議論が盛んに行われるようになりました。
これからのNFTと最近の話題
NFTの価値づくり
これまでNFTバブルの時期に多くのNFTが発行されてきていて、中でも活発なNFTがBluechip NFTといったものでした。Bluechip NFTはその後出てくる多くのNFTプロジェクトのモデルケースとなったため価値がついています。
筆者は「次のBluechip NFTになること」=「何かしらの新規性を持って今後のロールモデルとなること」と考えています。最初に概念を提唱したり、手法を編み出すというのはブロックチェーンの領域において非常に重要です。それはBitcoinがフォークされ、より性能が良いブロックチェーンが出てきても、ブロックチェーンの元祖であるBitcoinが最も評価されていることにわかりやすくあらわれています。
次なるNFTの可能性について考えると、やはりその「新概念」が重要になります。象徴的な事例を一つあげると2022年8月、NFTのバブルがはじけて失望期に入ってからFree to Ownという概念が登場しました。Free to Ownは無料でNFTを手に入れて、ゲームを長期的に楽しむために持っておくことを前提としたコンセプトです。投機的な側面が強かったそれまでのNFT市場においてFree to Ownは注目を集め、結果的にFree to Ownを最初に提唱したチームが発足したDigiDaigakuというNFTプロジェクトは現在2.64ETH(約70万円)で取引されています。のちにFree to Ownのモデルに則ったプロジェクトはいくつか登場していますが、DigiDaigakuほどの価値はついていません。
このように新たな概念が出てくるとそれをベースにまた新たなプロジェクトが勃興していきます。そして、そのモデルとなったNFTプロジェクトの価値はますます高くなっていきます。
次にこれからどのようなNFTが活発になっていくかの仮説について扱っていきます。
企業の参入の増加
今後はより多くの企業がNFT事業への参入や活用が起こると考えています。直近でもDiorのようなブランドからANAのような航空会社もNFTに参入をしています。
市場が落ち込んでいる中でNFTを導入することは投機性の強いタイミングよりも企業のブランドに色をつけずに検証できるため、NFT参入の動きは加速すると考えています。
特に、既存企業はキャッシュポイントやコンテンツをすでに持っていることから次項で扱うボトムアップコミュニティと相性が良いです。コンテンツ自体は持っているのでいかにボトムアップ性を作るかということが重要な鍵になります。
ボトムアップコンテンツ
これまでのBluechipのNFTは主に運営対ホルダー(コミュニティ)という構図でした。もちろんコミュニティ自身が何かを働きかけたり自分のNFTでコンテンツを作るという動きもありましたが、あくまで運営とコミュニティには明確な区分があったように感じます。運営はもちろん人であり、NFTの価値形成の期待値は主に運営に依存していました。
今後はその期待値をいかにコミュニティにもたせるかということと運営元に透明性があることが求められるようになると考えています。先述のAzukiの一件を踏まえても、運営に対する不信感が価格崩壊を起こした出来事を考えると透明性があることは非常に重要になります。
ボトムアップで価値を作るにはコミュニティが参加して価値を感じる体験を作り出す必要があります。運営がコミュニティ全体をリードするというよりもコミュニティ自身が主体で動く仕掛けを運営が用意するというのが重要になります。
少し踏み込んだ話になりますが、最近Autonomous Worldsという領域に盛り上がりの兆しが見えています。このAutonomous Worldsはブロックチェーン上に書き込まれたスマートコントラクトを世界のルールとして捉えることで自律的な世界を構築するという概念です。これもブロックチェーンの透明性がルールを形作る上で非常に概念になります。ここは少し別の機会に記事にします。
RWA
先述した現実の世界のアセットをトークン化するRWAという領域は、今すでに注目を集めています。国内でもNOT A HOTELやUniCask、Ticket Me、ANGOといったRWA系のサービスが注目を集めています。
トークン化することで資産の流動性を高めたり、先物的な使い方をすることができるため非常にNFTの有効なユースケースになります。
これからのNFTの難しさ
まずこれからのNFTは価値形成をするまでコミュニティを育成する時間が以前より長くなり、NFTの取引収益が発生するまでのリードタイムがかかるようになります。そのためNFTを売りその販売益を元手にコミュニティを作っていくという手法が取りづらくなるはずです。先述したFree to OwnのプロジェクトであるDigiDaigakuも2022年の8月に2億ドルの大型調達をしてNFTプロジェクトを育てています。
2つ目はボトムアップの価値形成の難しさがあります。多くのNFTプロジェクトは運営元が「このNFTには価値があります」というのを宣伝して、ユーザーにそれだけの価値があるということを認知させてきました。一方で、ボトムアップ型はコミュニティ全体を巻き込んで「これは価値あってもいいよね」という合意形成をしていくようなイメージです。ボトムアップの場合、地道にコツコツとコミュニティを育て上げるしかなく、1つ目の収益がたつまでに時間がかかるということとセットで考えるとより難しいポイントになります。
NFTの可能性
前述ではこれからのNFTの仮説や難しさを挙げてきました。なかなか難しいNFT活用ですが、なぜNFTに取り組むべきなのでしょうか?
価値というのはみんなが決めるものですが、トップダウンで価値が決まるとトップが堕落すると価格は一気に崩壊し、下落は下落を呼びます。なぜなら、トップの運営が「このNFTには価値がある」と豪語していたからです。
これからのNFTはボトムアップでコミュニティの中で価値の合意形成を行います。このプロセスはコミュニティを強固にするという点では非常に重要です。限りなく運営とコミュニティがシームレスであれば運営が価値がないと言ってもコミュニティの内部で合意形成ができていれば、その損失は小さく収まります。
強固なネットワークはネットワーク効果を生み、ネットワークの拡大を増強させます。ボトムアップであると、コミュニティが保有しているNFTは結果的にコミュニティに貢献したことに対するインセンティブになっています。認知の拡大や顧客の新たな体験価値の向上といった側面でこのネットワークは強力の道具になります。
「NFTじゃなくてもできる」ということを聞きますが、これまでの包括的な価値を踏まえると、これからのコミュニティ形成の過程にはNFTは必要不可欠な手段となると考えています。もちろん必要不可欠な手段と言えるようにするには何をNFTにするかなどの前提の設計が最重要の項目であることは抑える必要があります。
おわりに
そもそも価値とは何か、これまでのNFTの市況とこれからのNFTへの仮説などについて触れてきました。あくまで仮説の域を出ないですが、これまでの市場を振り返って整理した結果のものです。これまでのようにNFTであれば高値がつくという世界はもうありませんが、NFTの本来の価値はこれから創出されることを筆者は確信しています。
もし「NFTを使う際に、何をどうすればいいのかわからない」や「NFTである意味があるのかを考えると0に戻ってしまう」といった冒頭のお悩みをお持ちの事業者様は是非、シンシズモ株式会社にご相談ください。
読了NFTの配布
「なぜNFTを使うの?NFTの価値と可能性」を読んでいただきありがとうございました。以下のリンクより10枚限定で読了NFTを配布しています。この読了NFTを使っていつか何かするかも知れません。
https://v1.nftdelivery.jp/post/momAtg9k3vB9vftc70Sr
本NFTはテストネットで発行したNFTになります。
※現在メンテナンス中に伴いMetamaskでウォレットを接続する場合はWallet Connectを推奨