ENSの独自L2チェーン「Namechain」と独自チェーンの合理性について
こんにちは、山口(ぐっさん)です。
先日のDevConにてEthereum Name Service(ENS)から発表されたNamechainについてです。前回に引き続きアプリケーションが独自のチェーンを展開するという事例です。
今回はNamechainの紹介と独自チェーンを展開する合理性についてオンチェーン分析を通してみていきます。
Namechainの概要
Ethereum Name Service(ENS)は、人間にとってわかりやすい名前でウォレットアドレスや分散型リソースを管理するプロトコルとして知られています。このENSが、独自のL2ブロックチェーン「Namechain」の立ち上げを計画しています。
Namechainは、zk(ゼロ知識)ロールアップ技術を採用し、2025年末の稼働を目指して開発が進められています。このプロジェクトは、Ethereumメインネット上で動作する現在のENSv1から、より効率的なENSv2への移行を促進するものです。
技術的特徴と利点
ZKロールアップ技術の採用
Namechainは、スケーラビリティとコスト削減を目的に、ZKロールアップを採用しています。この選択は、OptimismのOPStack技術を使用する他のL2チェーンとの差別化ポイントとなっています。特に、EVM(Ethereum Virtual Machine)互換のzkEVM技術の選定を進めており、Ethereumのセキュリティと互換性を維持しつつ、効率的なトランザクション処理を目指しています。ガス代削減
Namechainの登場により、ユーザーはENSドメインの登録や更新時に発生するガス代を大幅に削減できる見込みです。これにより、ENSの利用がより広範なユーザー層にとって手軽なものになります。ENSプロトコルの進化
Namechainは、ENSプロトコルの基盤を根本的に再設計し、より多機能でスムーズなユーザー体験を提供します。この取り組みは、現行のEthereumメインネット上の運用と互換性を保ちながら、ENSの将来的な成長を支える基盤を形成するものです。
立ち上げの背景と合理性
ENSは、ウォレットアドレスや分散型アプリケーションをわかりやすく管理するための「ブロックチェーン版ドメインネームシステム」として、多くの支持を集めてきました。
しかし、Ethereum上でのガス代の高騰はENSの普及を妨げる要因となっていました。Namechainの構築により、この課題を解決しつつ、ENSのユーザビリティを向上させることが期待されています。
以下の図はENSの取得時のトランザクションを分析したものです。
橙:ENSの日次平均取得価格推移
青:トランザクションの日次平均ガス代推移
青のみになっているところは、ENSの取得価格よりもトランザクションのガス代の方が高い状態を示しています。
上記のグラフでは大小関係が少し見ずらいので、ENSの取得価格とトランザクションのガス代を対数グラフに表したものが以下のようなグラフになります。
対数グラフで見てみると、2020年手前まではENSの取得価格よりもガス代が低いという状態ですが、2020年の中頃からENSの取得価格とトランザクションのガス代が同程度の負担になっており、ENSの取得価格よりトランザクションのガス代が超えていることも度々起こっています。
また、ユーザーが支払ってる費用に対するガス代の負担率の推移をみると、やはり急激にあがっています。
とてもざっくりな計算ではありますが、2024年11月17日での各ネットワークでのガス代は以下のようになります。
Ethereumでのガス代平均:10.1USD
zkSyncのガス代平均:0.03USD
仮にENSをEthereumからzkSyncのネットワークに切り替えた場合、ユーザーのガス代負担は500分の1まで下がるということになります。
まとめ
ENSが計画するNamechainは、ZKロールアップ技術を基盤に、スケーラビリティとコスト削減を実現する新しいL2チェーンです。
これまではENSを取得するのに、ENSの取得価格よりも高いEthereumの高いガス代を支払うこともありましたが、zkをベースとした独自チェーンの展開によりガス代の負担を著しく下げることができます。
今後のENSの動きに要注目です。