ブロックチェーンの情報を使って市場を知るオンチェーン分析について
本記事ではブロックチェーン上の情報を使って市場の動向や製品の特性を知るオンチェーン分析について書いていきます。オンチェーン分析は、ブロックチェーン上のあらゆる取引情報が公開されているという特徴を最大限に活かした内容ですので、この記事を読んで、是非オンチェーン分析をやってみてください。
オンチェーン分析は全く難しくないので、ブロックチェーンに関わる方には一度は触れていただけると嬉しいです。
今回の記事は、以下のような構成で進めていきます。
オンチェーン/オフチェーンとは
オンチェーン分析とは
オンチェーン分析のやり方
Dune Analyticsについて
Dune Analyticsの使い方
オンチェーン分析で重要なこと
まとめ
オンチェーン/オフチェーンとは
まず、オンチェーン分析のオンチェーンという言葉について理解しましょう。
ブロックチェーン上の取引情報は誰でも閲覧可能です。各ブロックチェーンの取引の情報は以下のBlockchain Explorerと呼ばれるところから確認できます。
Etherscan(チェーン:Ethereum)
Polygonscan(チェーン:Polygon)
Bscscan(チェーン:BNB)
Arbiscan(チェーン:Arbitrum)
ここで確認できる取引情報はブロックチェーンに載っている(Blockchainにonしている)情報なのでオンチェーン(on-chain)と言います。
Blockchain Explorerは、各チェーンのあらゆるオンチェーン情報が確認できるので、これを見るだけでも非常に勉強になります。Blockchain Explorerの使い方は今度記事にします。
一方でオフチェーンの情報もあります。オフチェーンはブロックチェーンにのっていない状態のことを言います。
例えば、トークンの円転は主にオフチェーンで取り扱われます。1ETHが250,000円で取引される時を考えると、円という通貨がブロックチェーン上で取引できないため、ETHの送金はオンチェーンですが、取引所からユーザーへの円の送金はオフチェーンになります。
つまり、円という通貨で取引するのでオフチェーンになりますが、これに近い取引をオンチェーンで行うために円にペグしたトークン(いわゆるステーブルコイン)を使うことで、オンチェーンでの取引を可能にします。オンチェーンでの取引所として分散型取引所を使えば、オンチェーンでトークンを変換することができます。
オンチェーン分析とは
オンチェーン分析は、オンチェーン情報を取り扱うことでサービスや市場の動向を可視化し、洞察することを言います。
冒頭の通り、オンチェーン分析は、ブロックチェーンの特徴である誰でも情報が参照可能という点を最大限に活かしており、市場に出ているNFTやトークン、ウォレット、dappsなどを勝手に分析することができます。
オンチェーンの情報はTwitterのフォロワー数のように誤魔化しがきかないため、サービスを図る指標として非常に重要になります。
オンチェーン分析のやり方
オンチェーン分析をするにあたってオンチェーン情報を可視化するツールが重要になります。可視化することで文字列では見えなかった全体像を明らかにすることができます。オンチェーンの可視化ツールは様々ありますが、本記事ではDune Analyticsを取り扱います。
オンチェーンツールは他にも
などがあり、それぞれのユースケースに合わせて使いこなせると良いかと思います。
分析の手順
実際に分析をするにあたって情報を可視化することをしていきますが、分析の目的は洞察にあります。なので、まず気になる事柄やサービスを見つけることから始めましょう。実際の手順としては以下の通りです。
気になっていることを見つける
気になっている出来事の背景や原因に仮説を立てる
データをみて、事実を知る
仮説と事実を比較して検証する
なので、NFTが盛り下がっているというのがニュースになっているという話題があった際、本当に盛り下がっているのかを確認するのにオンチェーン分析を使うとします。
ここで「取引量が減っているかもしれない」という仮説や「取引額が減っているかもしれない」という仮説が挙げられます。この仮説の検証方法としてOpenSeaの月次での取引量や取引額を見て検証します。
注意しなければいけないのはOpenSeaがNFTのマーケット全体を表すサンプルとして正しいのか、盛り下がりを示す指標として取引額や取引量が正しいのか、など仮説を検証するための分析に妥当性があるのかを考えながら進めましょう。
Dune Analyticsについて
Duneは、ノルウェーの会社で開発されているオンチェーン情報の可視化ツールになります。オンチェーン情報をSQL言語ベースで整形していくことで、あらゆるオンチェーン情報へのアクセスを可能にしています。
また、昨年の2月に$70Mの大型調達をしており、web3領域のプロダクトとしてはかなり勢いを持っているため、筆者も個人的にとても好きなプロジェクトになります。
Duneの良い点として以下のような点があります。
SQLベースのため汎用性が高い
SQL自体がそこまで難易度が高くない
自分が作ったもの以外にも他人が作ったダッシュボードやコードを閲覧することができる
アップデートが多く、機能の追加が適宜行われており、利便性が高い
情報が豊富にあり、わからないことがあった際に聞ける環境が整っている
DuneではDune SQLという独自の言語が採用されていますが、そこまで難易度は高くなく、コードを書いたことがない人でも比較的すぐ使えるようになります。また、他人の作ったコードやダッシュボードが閲覧できるため、車輪の再発明をしなくて済み、コードを参考にすることができます。最近ではChatGPTを搭載して、コード記述や修正の自動化が行われているため、より使いやすくなっています。
SQLとは何か
SQLはデータを取り扱うための言語になります。
SQLによりExcelのような表に対してどの列を選別したり、フィルターをかけたり、グループごとに演算をしたり、データ同士を結合といった操作をすることができます。
イメージですが、以下のようなコントラクトに関するデータAがあるとします。
このデータAは
Tx hash(トランザクションに対して一意に定められる値)
Blocktime(格納されたブロックの時間)
DateTime(UTCの時間)
From(送り元のアドレス)
To(送り先のアドレス)
Contract Address(当該アドレス)
Value(FromがToに対して送金した額)
で構成されています。
このデータAに対して、2022/8/10に関する取引で送り元、送り先、コントラクト、取引額を抜粋するという処理をすると以下のようになります。SQLはこのような処理を行うことができる言語です。
Dune Analyticsの使い方
Duneではサービスやチェーン、トークンを検索してみるとすでに作られたダッシュボードやクエリ(ダッシュボードを構成するSQLの実行結果のデータ)を閲覧できます。
ダッシュボードで完結する場合
Duneを開く
左上の検索欄から気になるコンテンツを検索する
閲覧するダッシュボードを選択する
クエリを選択することでそのクエリの詳細を見ることができます。Dune SQLが採用される前に作成されたクエリはDune SQLで書かれていないため、多少のコードの記述が変わりますので注意が必要です。
クエリを作成する場合
新興プロジェクトやまだ詳細が書かれていないサービスの場合、ダッシュボードが未作成であったり少ないため、自力で情報をまとめ上げていくことになります。
上部のバー内の青い+マークからNew queryを選択する
クエリの作成ページに遷移する
クエリの作成ページは左にデータセットの検索、右上にSQLの記述部、右下にSQLを実行した結果が表示されます。
SQLの書き方
SQLを書くのに必要な関数は、ここで全てを紹介することはできないので、基本的なものだけ紹介します。
select 列 from 元となるデータセット
元となるデータセットの中から指定した列を表示します。Duneのクエリの作成ページから参照するデータセットを選択し、その中から表示する列名を指定することになります。
limit 数字
表示する行数を数字分絞る関数になります。なのでlimit 100とすると100個分の行数を表示するようになります。
where 条件
条件に適合したデータのみを表示するようになります。なので先ほど掲載したデータAであればwhere “DateTime”=Date ‘2022-08-10‘と記述すると、2022/8/10に関する情報をフィルターがけすることができるようになります。’2022-08-10’の前のDateは日付のデータ型にするための記述です。
ちなみに、データAは以下のようなクエリを実行するで加工後の結果になります。
少しSQLが書けるようになると、2023年7月の日次の取引額推移を表したSQLのコードが書けます。実際のクエリはこちらから閲覧できます。
上記のコードを実行すると以下のようになります。
関連記事
実際にSQLを書いていくことになると関数を知る必要が出てきたりしますので、うちのメンバーが書いたDuneの使い方に関する記事を参考にしてみてください。
もちろんDuneの公式ドキュメントをあるので、そちらを見ながらも良いかと思います。
実際にオンチェーン分析をした記事として、以前NFTのマーケットプレイスBlueの機能であるBlendに関するオンチェーン分析をしているのでぜひ読んでみてください。
オンチェーン分析で重要なこと
オンチェーン分析を今後進めていくにあたり、以下のようなことを意識してみるとオンチェーン分析をやりやすくなります。
何がオンチェーン情報で、何がオフチェーンの情報なのかを理解する
日頃からNFTを購入したり、トークンを触った際に、取引履歴を利用したチェーンのBlockchain Expolorerで確認すると何がオンチェーンに乗っているのかがわかるようになります。
オンチェーンの情報はガス代が発生するのでガス代を払っている場合は、オンチェーンになります。ただしユーザーが負担しない場合もあり、ユーザーサイドから見るとガス代が0のようになる場合もあります。
とりあえずRunをしよう
Duneでクエリを実行することをRunと言いますが、実際にSQLを書いてみたら、とりあえずRunをしましょう。エラーが起こってもAIの自動アシストがついていたりと何かと便利なので、Try & Errorを繰り返して完成に近づけていきましょう。
すでに作ってあるものをいかに利用するか
Dune周辺は情報が潤沢にあります。SQLに関することももちろんですが、ダッシュボードも出揃っています。DuneのDiscordでは質問を投げると過去に聞いた内容からレコメンドをくれるので非常に使いやすくなっています。
先人の知恵を存分に使うことができるのもDuneの最大の魅力です。
まとめ
ブロックチェーン上の情報をオンチェーン情報といい、オンチェーン情報を使って市場の動向などを知ることオンチェーン分析といいます。
オンチェーン分析にはさまざまなツールを使って行うことができますが、今回はDuneを取り上げました。Duneはブロックチェーン上の情報を可視化して、洞察する際の材料になります。
Duneで可視化する際にはSQLが必要ですが、そこまで難易度が高くなく教材が多いため、誰でもオンチェーン分析に取り組めるのでぜひ一度試してみてください。
もし、オンチェーン分析で気になることやご依頼があれば弊社にお問い合わせいただければと思います。