レストラン特化型ロイヤリティプログラムを提供する「Blackbird」の概要とトラクションについて
本記事では、レストラン特化型ロイヤリティプログラムを提供するWeb3スタートアップ「Blackbird」の概要と、現状分析をオンチェーンデータを用いて分析していきます。
今回の記事は、以下のような構成で進めていきます。
Blackbirdについて
Blackbirdの概要
Blackbirdの特徴
オンチェーンデータでの分析
メンバーシップNFTについての分析
提携店舗と来店回数についての分析
まとめ
1. Blackbirdについて
a. Blackbirdの概要
Blackbirdは、レストランに特化したロイヤリティプログラムをユーザーに提供しています。ユーザーは「Blackbird」(現在、日本国内からアクセスすることはできない)をダウンロードした後、Blackbirdと提携しているレストランにて、NFCチップ(近距離無線通信チップ)が組み込まれている専用の機械にスマホを近づけること(Tap in)で、フリードリンク、限定アイテム、レストランへのメッセージ送信、$FLYトークンなどの特典を受けとれます。
tap-in disc(the Blackbird branded “puck”)
現時点で、ニューヨークのほか、ロサンゼルス、シカゴ、サウスカロライナ州チャールストンのレストランと提携しており、新しいレストランとの提携も随時進めています。また、現在はiOSのみのサービス提供ですが、2024年内にAndroidへ対応することを明言しています。
b. Blackbirdの特徴
Blackbirdが提供するロイヤリティプログラムには以下の特徴と戦略があります。
①$FLYトークンとBlackbird Pay
Blackbirdのロイヤリティプログラムでは、ユーザーがレストランで食事するたびに$FLYトークンを獲得します。また、Blackbird Pay機能により、$FLYトークンを使用して食事代金を支払うこともできます。
$FLYトークンは、Baseチェーン(L2)上のBlackbird Flynet(L3)にローンチされており、F2というガストークンを使って発行され、支払いに使われています。
$FLY: Designed to Make Restaurants Soar
②フライホイールで比較するアメックスとの類似性
アメックス(american express)は、高いステータス性を備えたクレジットカードの発行元であるアメリカ合衆国の企業です。Blackbird は、決済システムの提供とロイヤルティ事業をしている点が、アメックスと共通しています。
アメックスにおいてもBlackbirdの事業成長において、フライホイールという概念が重要になります。フライホイールとは、トラクションの増加やユーザーの増加により、顧客体験が構造し、事業拡大を促進させるような構造です。
アメックスは、以下の戦略でユーザーを惹きつけ、加盟店を拡大させています。
アメックスのフライホイール
アメックスは、VisaやMastercard(約2%)よりも高い手数料(2.5〜3%)を請求します。
手数料収入によって、アメックスは手厚い特典を提供し、裕福なユーザーを引き付けます。
裕福なユーザーの取引量増加を促し、小売業者(加盟店)への高い手数料を正当化します。
大量購入によってポイントが多く生成され、ユーザーのロイヤルティと支出が増加します。
ロイヤルティと支出の増加により、より多くの小売業者が集まり、受け入れが拡大します。
受け入れが広がれば取引も増え、サイクルは継続します。
一方、Blackbirdも、以下の戦略の実現を目指しています。
Blackbirdのフライホイール
Blackbird payは、従来の決済システム(3〜4%)よりも低い手数料(2%)を請求します。
手数料が安いので、より多くのレストランがネットワークに参加します。
レストランは$FLYトークン等のロイヤリティプログラムを利用して、より多くのユーザーをネットワークに呼び込みます。
ユーザーは売上を押し上げ、より多くのレストランがネットワークに参加するよう促します。
取引量が多いと$FLYトークンが増え、ユーザーのロイヤルティと支出が増加します。
ロイヤルティと支出の増加により、より多くのレストランが集まり、受け入れが拡大します。
受け入れが広がれば取引も増え、サイクルは継続します。
低い手数料でレストラン(提携店舗)を増やすという入口は違えど、ユーザーのロイヤルティと支出を増加させて受け入れを拡大していくという流れが類似しています。
アメックスのフライホイール(原文)
③メンバーシップNFT
Blackbirdは、レストラン1つ1つに対応するメンバーシップNFTを、Baseチェーン(L2)上に発行します。メンバーシップNFTは、来店回数や支払額に応じてグレードが変化し、グレードごとに異なる特典が提供されます。
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④拡大と投資
Blackbirdは2023/10/4にAndreessen Horowitz(a16z)が主導する約36億円(24M$)規模の資金調達に成功し、総額で約52億円(35M$)を調達しているプロジェクトになります。
2. オンチェーンデータを使った分析
(1)メンバーシップNFTについての分析
メンバーシップNFTは、レストランに新規来店した際、専用の機械を通してBaseブロックチェーン上に発行されます。
2024/8/19週時点で130,000点近くのNFTが発行されており、43,000アドレス以上がNFTを取得しています。
全体の発行数と保有量を見ると1アドレスの平均保有量は3.07ほどですが、全体のアドレスのうち約7割以上の約31000人は、1つのメンバーシップNFTしか保有しておらず、残り3割弱のアドレスが複数のメンバーシップNFTを所有しているという状況です。
(2)提携店舗と来店回数についての分析
Blackbirdが提携している店舗と来店に関する情報はIPFSに保存されており、Duneにアップロードされたデータは、2024/4/24までの分しかありません。
2024/4/24時点での提携店舗は142店舗、総来店回数は約76000回、1店舗あたり平均535回の来店回数でした。メンバーシップNFTの伸びから考えると、当時よりも現在の方が大きい数字になっていると推測できます。
3.まとめ
Blackbirdは、すべてのお客様がレストランの玄関をくぐった瞬間から、常連客のように扱われることを目標としています。従来の決済システムに比べて、安い手数料で導入できる点や$FLYトークンを使ったweb3独自のロイヤリティプログラムなど、web2のプロダクトにない明確な優位性があります。多額の資金調達を成功させており、マーケットからの注目も高いので、これからも動向をチェックしていきます。
執筆者:こにちゃん
最後まで読んでいただきありがとうございました。